低年齢・低学年からの中学受験

中学受験の対策が低年齢化しています。低年齢・低学年で中学受験の対策をするべきか悩んでいるひとに向けた記事です。


中学受験の塾は何年生から入塾させればいいのか?

「中学受験の対策は低年齢化している。入塾は小3の2月からがお勧め」

2021年現在、このような記事を見かけることがあります。
本当にそうでしょうか。

入塾の時期は目指す中学校によってちがう!

入塾する時期は、志望校によって異なると思います。

・最難関中を目指す場合

小学校でしか勉強してこなかった子どもが難関中を目指す場合、新小6スタート(小5の2月)で中学受験の学習をはじめても間に合いません。
新小5スタート(小4の2月)でも、子どもの力によっては間に合わないのではないか、と個人的には思います。

・難関中を目指す場合

新小6スタート(小5の2月)だと厳しいと思います。
新小5スタート(小4の2月)も、子どもに力がないと間に合わないのではないか、と思います。
いずれにしても、かなりの詰め込みを覚悟しないといけないと思います。

・中堅校を目指す場合

国語力がそれなりにあれば、新小6スタート(小5の2月)でも間に合うのではないでしょうか。ただ、小学校でしか勉強してこなかった子どもがいきなり受験勉強をするわけなので、かなりのやる気が必要です。また、特に理社の詰め込みがかなり大変だと思います。
新小5スタート(小4の2月)だと余裕で間に合うと思います。
なぜ、そう言えるのでしょうか。

中学受験の入試科目のなかで、算数が一番難しく、かつ、勉強に時間がかかるといわれていますが、小3の息子、1桁の足し引きからはじめて2年間で四谷大塚の偏差値50〜55あたりの中堅校で合格点をとれるようになったためです。
「国語力がそれなりにある」「(息子と比べて脳が発達している)高学年」の子どもならば、1、2年もあれば間に合うのではないでしょうか。
※もちろん、教わる塾講師に腕があって、子ども本人にかなりのやる気があれば、の話です。つまり、条件がそろっている場合は、の話です。

・偏差値40台の中学校

少子化で入試では点をとれなくても合格できる中学校もあるので、小6からはじめても間に合うのではないでしょうか。

入塾の時期は子どもの性格や家庭環境などによってちがう!

子どものやる気、能力、性格、親子の関係などもあるので、「中学受験のために何歳から入塾させればいいのか」と一律にいえないと思っています。

入塾の時期は、自分で考えて決めよう!

特に子どもの状況(やる気、性格など)は親にしかわかりません。
入塾の時期は志望校と子どもの性格などによって決めたほうがいいと思います。

(例)四谷大塚の偏差値55くらいの中堅校を狙う!
→カリキュラムから見ると、小5スタートでも間に合う
→子どもの苦手意識がかなりある
→早めのスタートがいいかもしれない

…早めのスタートのほうが親とすれば安心かもしれませんね。

中学受験の低年齢化の理由と背景。低年齢からはじめる意義はあるのか?

中学受験の低年齢化の理由と背景です。
また、低年齢からはじめる意義はあるのかどうかについても書いています。

なぜ中学受験の塾への入塾が低年齢化しているのか?

カリキュラムから鑑みて、低学年から通塾させる必要性は乏しいと思います(特に関東の塾)。
それなのに、なぜ中学受験は低年齢化しているのでしょうか。
つぎのためだと言われています。

低学年で定員オーバーで締め切る塾がある。小4からだと入塾できないかもしれない

席取り目的ですね。
ちなみに、「塾は小4になれば定員を増やす」「転塾する子どももいる」で、小4以降でも入塾できるのではないか、とも言われています。

中学受験の低年齢化の背後にあるもの

少子化で大学受験は易化しているにもかかわらず、中学受験では低年齢化、受験率も上昇という不思議な現象が生じています。
これに対してマスメディアなどは「子どもの学歴で自慢したい親による過剰な教育」のような書きかたをしていますが、本当にそうなのでしょうか。
わたしはつぎのような心理が働いていると思っています。

お先真っ暗な日本経済。
現時点でも一部の若者は、「どれだけ頑張っても、親の収入を超えることはない」と悲観的になっているが、現実は残酷で、もっと、ひどい事態になるのではないか、と思われる。
そういうなか、大学が統廃合、合格者数も減少。
これと並行して、危機感がある親が急増。
日本経済はゆっくりと沈んでいき、不景気が当たり前の世の中になっても、受験は過熱する一方。
子どもたちが受験するころには、難関国立大はかつてないほどの熾烈な競争を勝ち抜かないと合格できなくなっている。
難関国立大、難関私立大を出ないとロクに就職できないというオマケつきで――。

悲観的になりすぎている、きらいはありますが、情報に敏感な裕福な層のなかに根底にこういう不安を抱えている層が多くなってきているから、中学受験の過熱や低年齢化になっているのではないでしょうか。たぶん。
そういう親は「本当にこの年齢から勉強させる必要があるのかなー」などと疑問を感じつつも、子どもに勉強させようとしているのだと思います。

それに加えて、以下もあると思います。

・少子化。一人っ子の家庭が多くなる
・共働き家庭の増加で、金銭的にゆとりがある家庭が増えた

つまり、「将来に対する不安」と「(共働き世帯の増加)+(1世帯あたりの子どもの数が減少)=子どもにかける教育費が増加」の2つが要因だと思うわけです。

低学年で勉強させるのは害?それとも有用?

中学受験の情報を集めていると、つぎのような文言をよく見かけます。

・低学年は遊ばせましょう! 遊んでいた子どもこそのびる!
・遊んでいない子どもは、高学年で失速する!
・小さな子どもに勉強させるのは害!

このようにいう塾講師、教育評論家は、一般人の「楽したい」という気持ちを利用してお金儲けをしようとしているだけです。
そもそも上記の言い分に根拠は一切ありませんし。

・子どもの面倒を見たくない。放置したい。そこに「低学年は遊ばせましょう! 遊んでいた子どもこそのびる! 小さな子どもに勉強させるのは害!」と言われて、「あ、放置していればいいんだ!」
・ただ、勉強させていないと不安になる。そこに「遊んでいない子どもは、高学年で失速する!」と言われて安心する

では、低年齢・低学年から中学受験の対策をすべきなのでしょうか。
2021年現在では、関東と関西では事情が異なるので分けます。

まずは、関東。
関東の大手塾では、中学受験の対策は小4からはじまる――つまり、小1〜小3までは中学受験とはあまり関係がないことを学習します。
また、関東では飛び級の文化がないようで、低年齢からガッツリ勉強している家庭はほとんどないようです(中学受験とは関係があまりないことをガッツリと学習している家庭はあるようですが…)。

つぎに、関西。
関西の大手塾では、低学年から灘中の算数を見据えたカリキュラムが組まれているようです。また、飛び級の文化もあって低年齢からかなり勉強している家庭もあるようです。

というわけで、関東ならば焦る必要はない、関西でトップ層を目指しているのならば入塾したほうがいいかもしれないと思います。

低学年からの通塾を考えているひとへ

低学年からの通塾を考えている場合は、つぎのことに気をつけましょう。

入塾がはやいと、その分、塾の費用がかかる

低学年のときは、塾代はそれほど高くありません。
しかし、月々でみれば大した金額ではなくても、総額だと大きな金額になるのが世の常。
入塾がはやいとその分塾の費用がかかるので、入塾前に中学受験が終わるまでの塾代(総額)を計算しておくことをお勧めします

中学受験終了組のアドバイスはアテにならない

「お子さんが御三家に合格。そんな中学受験終了組が『4年生の入塾で間に合う』と言っていた。だから4年の入塾にした」

このようにいうひとたちがいます。
しかし、つぎの2点から中学受験終了組の言うことを、うのみするのはお勧めできません。

・中学受験の終了組が言う「遅くても大丈夫(はやいのはダメ)」「はやいほうがいい(遅いのはダメ)」はすべて結果論であり、その家庭でしか通用しない
・中学受験の競争率もちがう

自分で考えることをお勧めします。

塾講師のアドバイスはアテにならない

「塾の先生が6年の入塾がいいと言っていた」

このようにいうひとたちがいます。
しかし、つぎの点から塾講師の言うことを、うのみするのはお勧めできません。

1.塾講師には、家庭で何をどのくらい学習しているのかわからない
2.塾も商売なので、早めの入塾を勧めてくる

上記2はわかるとしても、上記1はどういうことでしょうか。
たとえば、家庭でめちゃくちゃ鍛えられている子どもが小6で入塾してきたケースを考えてみましょう。

塾講師はその家庭がどのくらい家庭学習しているのかわかりません。
「いきなり小6の授業についていっている」ことしかわかりません。

能天気な塾講師だと、これをもってして「やはり小6からはじめても十分に間に合うじゃないか!」みたいに言い出すと思います。

塾講師が把握しているのは、カリキュラムや教材だけです。
家庭内のことはわかりません。

本当に学習習慣がつくかリサーチしよう!

低年齢・低学年から塾通いするメリットの1つに「学習習慣がつく」があります。
しかし、下のクラスだと授業中に遊んだり話したりする子どもがいて授業にならないことがあるそうです。
そういうところに通っても、学習習慣がつくとは考えにくいです。
入塾するときのクラスがどのような状況なのか事前にリサーチすることをお勧めします。

低年齢からガチで中学受験の対策をしている層

低年齢からガチで中学受験の対策をしているかたたちは、どうしているのでしょうか。
さまざまな中学受験ブログを調べてみました。

ちなみに、現実は低年齢・低学年のうちからここまでする家庭はほとんどないと思います。ここから何を削っていくのかだと思います。
それと、少子高齢化で大学受験はかんたんになっているにもかかわらず首都圏だけ中学受験が過熱しているので、幼少のころからここまで勉強させる必要があるのかは、よく考える必要もあると思います。

年少から年長の中学受験

<習い事>
・公文、ピグマリオンの選択。そろばんをするところもある。公文式だと週に2日で、算数と国語。
・進められる限り、先に進める(算数は「小学校の計算問題は終了」が目安)。公文の場合、公文だけだと高進度にならないようで、親も介入(特に算数)。

<家庭学習>
・教養という名の勉強
・漢字検定も先に進める
・低年齢用のパズル・思考力系の問題を解かせる(なぞぺー、サピックスのきらめきなど)
・年長あたりから、最レベなど、難易度が高い問題集にも取り組むところもある(算数と国語)

小1の中学受験

<習い事、塾>
・公文式やそろばん。公文は、週に2日で算数と国語
・大手塾。週に1〜2日かな?

<家庭学習>
・教養という名の勉強
・最レベなど、難易度が高い問題集にも取り組む(算数と国語)
・漢字検定、算数検定も先に進める
・低年齢用のパズル・思考力系の問題を解かせるとともに、キッズBEEに挑戦
・英語学習も開始

小2、小3の中学受験

<習い事、塾>
・大手塾。週に1〜2日
・算数塾。週に1〜2日

<家庭学習>
・最レベなど、難易度が高い問題集(算数と国語)
・漢字検定、算数検定は終わり、数学検定に駒を進める家庭もある。
・低年齢用のパズル・思考力系の問題を解かせるとともに、キッズBEEに挑戦
・英語学習

小4の中学受験

<習い事、塾>
・大手塾。週に2日
・算数塾。週に2日

<家庭学習>
・親ががっつり教えることはなくなっても、管理の手は緩めず

低学年では「模試ジャンキー」に要注意!

中学受験ブログ界隈には「低学年の模試をやたら受けさせるひとたち」がいます。
わたしは「模試ジャンキー」と呼んでいます。

小1から小3までの模試の価値

関西と関東の塾ではカリキュラムが大きく異なるので分けます。

まずは、関東。
前述したように、関東の大手塾では、小1〜小3までは中学受験とあまり関係がないことを学習しますし、低年齢からガッツリ中学受験の勉強をしている家庭はほとんどないので、模試で立ち位置を見ても仕方がないと思います。

つぎに、関西。
関西の大手塾では、低学年から灘中の算数を見据えたカリキュラムが組まれていますが、実際に親塾をしてみて小3までは飛ばすことができると思いました。つまり、カリキュラムから考えると、模試を受けさせる意味合いは乏しいといえます。
しかし、関西では飛び級の文化もあって低年齢からかなり勉強している家庭もあるため、立ち位置を見る価値はあるかもしれないとは思いますが、ひんぱんに受験させる意味は乏しいと思います。

…そういうなか、小1〜小3の関東の塾の模試をやたら受けさせるひとたちがいます。
なぜ、模試を受けさせるのでしょうか。

模試ジャンキー

ひとはなぜギャンブルにのめりこむのかいくつか理由があるそうですが、1つに「ランダムにくる報酬」があるそうです。

・勝ち続ける、もしくは負け続けると飽きる
・「負け→負け→勝ち→負け→勝ち→負け」のように勝ちがランダムにあらわれるとやめられなくなる

これが何と関係があるのかというと、低学年における中学受験の模試です。

「子どもの偏差値があがらない…。やめようかな…。 → キター! 偏差値×!!!
 → また転落した…。やめようかな…。でも、この子は偏差値×をとった、できる子!」

はじめは「高学歴にしてあげたい」などの気持ちだったのに、いつの間にか偏差値の上下にのめりこんでいたり、「高偏差値=天才」と思い込んでいて、「子どもが天才か否か!?それがわかるゲーム」の勝敗にのめりこんでいたりするような感じでしょうか。

言うなれば、模試ジャンキー!

中学受験は「子ども」。
辛い想いをして勉強するのも子ども。
教育虐待で一生癒えない傷を負うのも子ども。

関東の塾における低学年の成績は意味はあまりありません。
5年がはじまった時点でさえも、まだ中学受験の2割しか勉強していませんからね。
高学年以外で、過剰に偏差値に反応する、毎月のように模試を受けさせる必要はないと思います。

中学受験を攻略のトップページ